熱処理ってややこしくてなんか苦手。そんなときは、まず最低限の用語だけを覚えていきましょう。基本的なところだけを厳選してまとめています。
熱処理とは
熱処理の勉強をしていて、温度と成分でどの状態になっているとか、焼きなまし?焼きならし?どっち?とか、ごちゃごちゃになって嫌になることがあると思います。
普段使っている刃物など、熱処理されたものはたくさんありますが、熱処理の形跡が目に見えないので難しく感じます。
熱処理を一言で言えば、外見を変えずに内部の組織を変化させ、目的にあった状態にコントロールすることです。
どうやって鉄を作るの
鉄鋼材料の主成分は鉄(Fe)ですが、どうやって作られるかを説明します。鉄の原材料は鉄鉱石ですが、不純物が多く含まれているので、この不純物を取り除き鉄にしていきます。
まず鉄鉱石から鉄を取り出す工程のことを製銑(せいせん)と呼びます。製鉄ではないではないです。銑鉄(せんてつ)を作ることです。鉄鉱石では鉄は酸素と結びついていますが、高温にすると鉄は炭素と結びつきます。そこで高炉と呼ぶ巨大な溶鉱炉で、鉄鉱石とコークスを入れて銑鉄を取り出します。高炉は製鉄所のシンボルと言えるので見たことがあるかもしれません。
さらに銑鉄を転炉という炉に入れ高温で加熱して不純物を取り除き、精製して良質な鉄を製造します。
鉄と鋼ってなにが違う
鉄と鉄以外の成分の比率によって組成が分類されます。特に炭素は重要な元素で、その含有量が材料を分類する基本になります。炭素含有量と分類は次の通りです。
0~0.02%:純鉄 0.02~2.06%:鋼(はがね) 2.06~6.67%:鋳鉄
純鉄は軟かいので細線やジュースの缶などに使われています。鋼は強度があり、最も身近に使われています。鋳鉄は硬く脆い性質で、マンホールなど鋳造品に使われています。
熱処理の手法
焼きなまし
焼きなましの目的は軟らかくすることです。少し難しく言うと、鋼の軟化、内部応力除去、鋼内組織の均一化などです。加熱温度や保持時間、冷却時間などの条件は鋼の種類でさまざまですが、ゆっくりと冷却するということだけ覚えておいてください。
焼きならし
焼きならしの目的は、組織の結晶粒を微細化して均一化することです。また、焼きなまし後は軟らかくなりますが、硬さが適さないものは焼きならしによって硬化させる目的もあります。焼きならしは加熱し、一定時間温度を保持したあと、空気冷却します。焼きならしは、焼きなましと類似した加熱方法ですが、冷却速度が早いという違いがあります。この辺が分かりにくいポイントですので注意しましょう。
焼き入れ
焼き入れは、鍛冶職人が加熱した刃物を叩いたあと、水の中にドボンとつけてジュっとやるあれです。焼入れを行うことにより、鉄鋼材を硬くして、耐摩耗性や引張強さ、疲労強度などの強度を向上させることができます。焼入れしたままでは硬いが脆くなるため、靭性(粘り強さのこと)を回復させて粘り強い材料にするために焼戻しを焼入れ後に行うのが一般的です。焼き入れに使用する冷却剤はいろいろありますが、手軽で冷却効果も高い水を用いる場合、適正な水温は15℃が良いとされています。
焼戻し
焼戻しの目的は、硬さ調整、内部応力除去、靭性を増すことです。焼戻しには低温焼戻しと高温焼戻しがあり、硬さと靭性に関して違いがあります。低温焼戻しは靭性より硬さを優先し、150~200℃で保持したのちに空冷します。高温焼戻しは靭性を優先し、550~650℃で保持したのちに空冷します。焼き入れと高温焼戻しは歯車や各種構造物などで多用されています。
まとめ
ここで触れた内容は熱処理の基本的な内容です。この内容を一通り頭に入れたあとに、必要な性質や組成を確認していきましょう。設計者であれば目的に合わせた材料選定ができるように金属の知識も学ぶとよいです。機械設計技術者などの試験対策としては、炭素鋼の平均状態図なども押さえておきましょう。
厳選!おすすめ参考書3選
まず一つ目に紹介するのは「熱処理のしくみと技術」という本です。こちらはオールカラーで見やすいのが特徴です。左側に用語や説明、右側に図や写真が並び、構成だけでなく内容もわかりやすく書かれています。機械設計の勉強や高圧ガスの知識を深めることにも役に立つ内容です。
こちらも熱処理の技術的な内容と、手法や仕組み、表面処理の詳細な内容まで8章で構成されています。ほとんどの範囲が集約・網羅されており、一冊あれば知ることが出来ることができます。個人的にはコラムの内容が面白かったです。
トコトンやさしいシリーズから出ている「熱処理の本」です。このシリーズは始めての人でも読みやすいつくりになっています。ほかの参考書で難しく思う場合は、まずこちらの本を何度か読んでイメージを持ってから、別の参考書を読むと良いと思います。絵付きで楽しみながら勉強したいときにおすすめです。
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